きゅっきゅっと雪を踏みしめる音が響く。
寄り添いながら歩く二人の視界には美しい銀世界が広がっている。

「寒くないか?神子。」
白い息を吐き出す花梨の顔を、覗き込む琥珀の瞳が心配そうに揺れている。
舞い散る雪に見惚れていた花梨は、はっと我に返って泰継を見上げた。
「大丈夫です!・・・こんな綺麗な雪が見れるなんて・・・初めてだから・・・」
「初めて?お前の世界では見られぬのか?」
寒さのせいで薄っすらと頬を染めている花梨は、うーんと唸ると首を傾げた。
「雪は降りますけど・・・こんなに辺り一面が雪に覆われるのは初めてです。」
「そうか・・・」
一言呟く泰継は、嬉しそうに目を細める。

此処は北山、泰継が過ごしてきた土地。


神子が雪を見たいと言った。
紫姫の館からでも見えている、と応えると不機嫌そうに口を尖らせ「泰継さんと二人で見たいんです・・・」と、そう言ってくれた。

嬉しかった。だから・・・此処へ、雪に覆われる北山へ連れて来た。


花梨の「初めて」という言葉に、泰継も自然に笑みが零れる。その笑みを、眩しそうに見上げる花梨は、泰継の胸に擦り寄った。
「泰継さんと見れて、嬉しいです。」
「・・・・・・・・神子・・・」
泰継は僅かに口端を上げると花梨を優しく抱き締める。そして赤くなっている耳元で「私もだ」と囁いた。


―・・・・・・・・・・・・ン


「え?」
聞き慣れた音が脳に直接響き、花梨は目を開く。
「神子、見ろ。」
透き通る声が花梨を促す。
花梨を抱き締めたまま上を見上げている泰継の視線を追うように、ゆっくりと顔を上げた。

「・・・・・・桜?!」
舞い散る銀雪と共に、色鮮やかな桜の花びらが舞う。
その光景に二人は驚きを隠せなかった。


―・・・シャラン


「あっ・・・龍神様だ・・・!」
納得したように呟く花梨を見て、泰継は一瞬の瞠目の後ふっと息を吐いた。
「お前への、祝福なのだろうな・・・」
「私達、です!」
頬を膨らませながら反論する花梨に泰継は苦笑して頷いた。
「そうか・・・お前が言うのなら、そうなのだろうな。」
「そうなんです!」
泰継はそっと背後から花梨を抱き締めて瞳を閉じた。

―私にも聞こえたからな・・・

鈴の音が聞こえた事は後で神子に伝えよう。
今は、この雪桜を楽しみたい。

神子と、二人で・・・―

Illustration:芙龍紫月様
Story:悠木綺羅様

「陰陽同盟」様の企画コーナーで、同盟参加者限定でフリーになっていた作品を頂いて参りました。芙龍様の投稿作品に、「陰陽同盟」管理人の悠木綺羅様が創作を付けられたものなのですが、あまりに素敵だったので、無理を言って両方頂いてしまいました(笑)。欲張りなヤツ…。
雪と桜の花弁が舞う光景…。想像しただけでもロマンチックな感じがしますよね!芙龍様のイラストを拝見していると、雪が降っていて寒いはずなのに、何だか暖かい気持ちになるのです。泰継さんと花梨ちゃんのラブラブパワーのせいかも(笑)。花梨ちゃんのおねだりに応えて、泰継さんが何かの術を使って舞い落ちる雪を桜の花弁に変えたのかなあ、とか、色んな想像を掻き立てられてしまいました。
綺羅様の創作、イラストの雰囲気に合っていて素敵ですよね!「雪が見たい」と言う花梨ちゃんに、「紫姫の館でも見られる」と応える泰継さんが、何だか彼らしくて(笑)。銀世界にたった二人で、龍神様の祝福を受けるなんて〜。想像しただけでニヤけてしまうシチュエーションです。
芙龍様、綺羅様、素敵なイラスト&創作をありがとうございました!

(2003.11.27)
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